【落語はろー・データ編】公開中(ここをクリック)

古今亭志ん生、八代目桂文楽、三遊亭圓生、古今亭志ん朝など過去の名人落語家の残された落語音源データを公開しています。

 
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小三治の新たなDVD全集が出ます2012年09月03日 00:19

小三治のDVD全集はすでに小学館から発売されていますが、12月にソニー・ミュージックから新たにDVD全集が出ることになりました。【ソニー・ミュージックのページへリンク】。今回は上巻で下巻も出るということ。「小学館の全集とは重複は無い」と銘打っています。ラインナップをみて嬉しいのは、「景清」や「鼠穴」など柳派以外の噺で、最近はまったく演じなくなった演目があることでしょうか。
 小三治師は第五次落語研究会に積極的な噺家のひとりで、二ツ目時代の1968年7月の第5回公演で初出演、そのときの演目は若手らしく「たらちね」。その後、年に2~3回程度ペースで出演しており、特に1998年、1999年は年4回も出演しています。さらに当時は志ん朝が年2回のペースで出演していましたから、年12回のうち6回の割で志ん朝或いは小三治の高座が見られた訳です。この頃私は落語研究会のご常連会員でした。ご常連席で埋まるのは、ホールの定員の3分の2程度でした(さすがに当日売りを含めれば満席にはなった)が、今のように小三治師の出る落語会チケット目当てに狂騒する様をみれば、余裕のあるものでした。
 小三治師についてもうひとつ言えることはテレビ出演にも積極的なことです。昭和43年以来45年間の落語研究会公演で114回出演していますが、そのうちの実に88回分がテレビ放送でオンエアされています。真打に成り立ての頃からいかにテレビ局に重宝されたかがわかります。
 ところで先代小さんのDVD全集は今年5月に上巻が発売されましたが、下巻はどうなったのでしょう。来年の5月から7月頃の発売で、小三治の下巻は来年11月から12月頃の発売とにらんでいますがどうでしょう?

【訂正とお詫び】当初、小学館のDVD全集とは「付き馬」が重複すると記しましたが、当方の記憶違いで小学館の全集に「付き馬」は収録されていませんでした。お詫びして訂正します。

この時季になると気になるTBS「ラジオ寄席」2012年09月04日 18:54

 暑さは続くものの朝晩はしのぎやすくなり季節の変わり目を感じる頃になりました。この時季になると気になるのが毎年10月から翌年3月のみにTBSラジオで放送されている「ラジオ寄席」が今シーズンも放送されるかということです。30年以上も続くこの番組。テレビでもラジオでも演芸番組がめっきり減ってしまった現在、落語がOAされるということ自体貴重ですし、なにより「なつかしの名人芸」で過去の名人の音源を放送してくれることが嬉しい。音源コレクターからしても「これは!」という逸品も少なからずあります。TBSのなかにはまだまだ落語に理解のある人材がいるようですね。
 日曜の夜のラジオは長寿番組が多いといわれますが安泰とはいえません。そのTBSラジオにしても数年前に「五木寛之の夜」打ち切られてしまいました。この番組の場合は一社提供であったカネボウの経営悪化やら粉飾決算などが問題となったようですが、やはり安定的かつ地道に支えてくれるスポンサーの存在が番組存続の大きな力になるようです。ラジオ寄席でも「爛漫」が落語・演芸放送に長期にわたって理解を示してくれているのでしょう。応援したいところですが、爛漫さん、ごめんなさい。私は日本酒が飲めません。
 というわけで、今シーズンの放送ですが、TBSラジオのHPではまだ告知はありませんが、爛漫のHP→【リンク】に公開録音の情報が載っていました。回数はは全7回。「公開録音」と「なつかしの名人芸」をほぼ半数ずつ放送する編成は今年度も変わらないものと思われます。
 私の自宅は関東の南東部で、一般のラジオだとTBSの受信状態が悪い(TBSの送信所は埼玉県にある)ので、「なつかしの名人芸」でどうしてもクリアな良い状態で録音したい番組内容である時は、ポータブルのカセット(またはMD)録音機とラジオをカバンに入れ電車を乗り継いで電波の良く入りそうな所まで行き(北区とか豊島区あたり)、喫茶店やファストフード店を1時間ほど陣取って放送録音をしたものです。こういう手間と苦労もラジコの普及で過去のものになりました。
 TBSの場合、野球中継で放送が休止されてしまうことがあるという問題があります。昨年度は幸か不幸か「復興ラジコ」ということで、東北地方のラジオ放送がラジコを通して日本全国で聴取が可能となり、TBSで中止のプログラムを野球中継をしないTBC(東北放送)等で聴くことができました。しかし、復興ラジコは今年3月末で打ち切りになり、今年度はこの裏ワザは利用できません。さて、どうしたら良いものでしょう。この問題については、追々記してゆきます。

カセットデッキ壊れる2012年09月07日 03:44

我が家のカセットデッキが故障し再生できなくなりました。ダブルカセットで片方は2年ほど前に壊れ、もう片方を騙し騙し使っていたのですが、先日そちらもとうとう使用できなくなりました。購入したのは1999年で3万円ほどだったか。もちろんドルビーもついています。当時はまたi-podなるものはなくMD全盛の時代でした。私がカセットを使うようになったのは小学校3年生の時だったでしょうか。中学時代は音楽を、高校時代はラジオの深夜放送のエアチェックに夢中になりました。落語放送を録音するようになったのは大学時代の後半からです。1990年代後半からMDが席巻するようになるとカセットは片隅に追いやられるようになり、「これはいかん」と過去にカセットに録音したものをMDにダビングするために件の少し高めのカセットデッキを購入したのです。何年間かはMDへのダビング用として使用していたのですが、MDの時代は短かった。1990年代後半から2000年代中盤だけだったでしょうか。2000年代にはいるとHDタイプの携帯プレーヤーというものがポツポツと出始め、アップルのi-podの発売と大ヒットで一気に拡大。私も2004年頃にはコンピュータを使って音源をデジタル化する術を習得しました。しかし記録媒体としてHDDは故障すると一気にすべてデータはパァになるしCD-Rも数年するとデータが消えてしまう場合があるなど確実なものがなく、私の場合は依然としてMDへの録音が主流でした。そして3~4年ほど前からネット上でyoutubeやニコニコ動画などが台頭するようになり、パソコンで音楽を聴いたり映像をみるということが普通になります。こうなると音楽を聴くために機器にMDを出し入れするのが面倒になり、さらに記録媒体としてUSBメモリやSDカードが普及し大容量化・値段も大幅に下落しました。思えば、エジソンが発明したレコード以来、テープデッキ、CD、フロッピーディスク、HDD、MDまで「記録媒体」というのは「回転させる」というのが常でしたが、駆動系が駄目になるとすべて駄目になるという点と接触面が劣化する点とで致命的欠点を負っていました。それがUSBメモリやSDカードによって「回転させない」記録媒体というものが出来たのです(電子が原子核の周りを回っているというのは無しよ)。これは決定的でした。私も、音源のデジタル化が急速に進み、更にこの1年ほどは録音機材としてMDを使う機会はほとんどなくなりました。こうなると、カセットの時と同じくまたしても「過去にMDで録音したものをどうするか」という問題が浮上するわけです。第一、カセットにしてもまだダビング出来ないままのものが少なからずあります。カセットデッキが壊れた後サイトでしらべましたが、主要なメーカーはもちろんカセットデッキを生産・販売していませんし、ドルビーのついているカセット専用機となるとTEAKが4万円程度のものを1機種だしているだけです。MDにしても本家本元であるソニーも携帯用のMDウォークマンは既に販売していません。ケースに入れられた数百枚のMDを見ながら「はて、これをどうするか」と悩みます。記録媒体との間に抱えるジレンマ。これはいつの時代もコレクターに負わされた宿命なのでしょうか。

圓生「死神」カラーの謎2012年09月11日 23:14

 落語音源のコレクターとして図書館へ行くことが度々あります。私は市販しているCDやDVDは購入してしまうことが多いので音源自体を借りることはあまりありません。かつては廃盤になって入手が困難になったCDを探したりしていたのですが、あらかた借り尽くしてしまったようでそうすることも少なくなりました。
 図書館へ行く目的は「音源集め」以外にもうひとつ、「落語はろー」でデータ・リストを公開する身として大切なのが、過去のテレビやラジオでの落語の放送記録を調べること。音源について放送日や番組名など不明な点がある時は、新聞の縮刷版を借り、ラ・テ欄を見て調べます。ついでに社会面もチラリ見し「あ、この落語を演じていた頃はこんな出来事があったのか」などと妙にニタリとしたりもします。そういう訳で先日も最寄りの図書館へ赴きいくつか調べ事をしたのですが、そのうちの一つは「落語はろー」三遊亭圓生のリストのうちの「死神」テイク8についてでした。この「死神」は動画サイトでも簡単に見られるのでご存じの方も多いでしょう。「落語はろー」にも載せてある通り、1992年12月25日にNHK-BSで「テレビ放送開始40周年を記念して懐かしの放送映像をもう一度見る」というコンセプトの番組で放送されたのです。動画サイトで出回っているのもこれを録画した映像ですが、この映像について、元の放送日が「1968年8月20日」というデータと「1968年8月22日」というデータが混在しているのです。「2日の違いくらい、どうでもいいじゃないか」と思えないのが、些末なことまでこだわるコレクターの悲しさ。調べた結果は、本放送が「8月20日」、再放送が「8月22日」ということで「どちらでも正解」でしたが、データ・リストへの記録としてはやはり「8月20日」と記すべきでしょう。本放送は午後4時頃のオンエアだったので、人形町末廣の昼の部のトリの高座を生放送したものと思われます。と、これで一件落着かと思ったら新たな謎が生じました。1968年当時のテレビはカラー放送と白黒放送が混在していたので、新聞のテレビ欄には、カラーの番組には「カラー」と記してあったのですが、この「死神」にも「カラー」と書いてあります。しかし、件の1992年12月25日のNHK-BSの放送は「白黒」でしたし、もちろん動画サイトで出回っている映像も白黒です。これはどういうことでしょう? 考えるのに、今、残っているのはテレビ局が撮影したオリジナルのテープの映像でなく、放送しているモニター画面を白黒の撮影機材で録画したものと思うのですがどうでしょう? 謎をひとつ解決すれば、また新たな謎がひとつ生じる、これは過去を調べる者としての迷いであり、また楽しさでもあります。

襲名・改名とデータベースの微妙な関係2012年09月14日 21:18

 まだまだ暑い日々が続きます。この暑いさ中、今年は上方の落語界と東京の落語界でそれぞれ大名跡の襲名がなされました。このページをご覧の方にならご説明するまでもないでしょうが、上方では7月に桂三枝が六代目桂文枝を、東京では9月に桂平治が十一代目桂文治を襲名しました。故十代目文治師には何人か弟子がおり、いずれも真打昇進時に改名していますが、平治師だけは二ツ目の時の名前そのままで1999年に真打になっています。「これは平治を次の文治にする布石なのかな」と当時思いましたが、案の定その通りになりました。先代文治師は骨格のキチッとした古典を演じる本格派でしたが、それでありながら客席に爆笑をさそうという点でホール落語よりは寄席の似合う師匠でした。奇を衒うような笑いばかりに目を向けがちな演芸界で、正当な古典を貫く先代文治師はまさに寄席の「鑑」と言って良かったでしょう。一方、新たな文治師も古典オンリーと言って良い師匠で、気だるい寄席の空気をパッと覚まさせるような陽気な高座が身上であり、寄席向きの噺家さんと言えましょう。落語の師匠方や個別の噺についてネット上であれこれ論評するというのは私のポリシーでないのでこの話題についてはこの辺で終わらせます。
 で、私が今日書きたいのは「襲名」とか「改名」とか、そのものについてではなく、噺家さんが「改名」することと落語関係情報のデータベースとの「微妙な関係」についてです。最近では世間一般では、企業で結婚等により姓が変わっても旧姓をそのまま使わせることが多くなりました。名前が変わることにより業務に支障が出るとか、「過去のデータとの整合性」を持たせるとかそういう事情があるのでしょう。このことについて賛否両論ありましょうが、それについて記すつもりはありません。ただ、落語情報のデータベースを作る身として厄介なのがこの「改名」による「過去のデータとの整合性」という事なのです。データベースで大切な事のひとつは「検索が簡単に出来る」との点なのですが、「改名」により同一人物でありながら複数の違う名で登録されているとか、過去または現在で同じ名の噺家が何人もいるというのは、実に頭を悩ませることなのです。「林家正蔵」で検索すると、八代目正蔵師の「彦六」時代のデータは出てきませんし、さらに現・九代目「正蔵」師のデータと混じってしまいます。前座から二ツ目、二ツ目から真打と昇進する時と2回改名することはごく普通のことですし、なかには快楽亭ブラック師のように16回も改名した(つまり過去と現在とで17の名がある)強者の師匠もいらっしゃいます。名前の欄を17設けるというのは非現実的ですね。改名の履歴を登録したデータベースを独立させて作って、それを他のデータベースと連動させるというのが理想的ですが、シェアウェアの安物のデータベースソフトでそんなことは(多分)出来ないし、第一、私には設計するスキルもありません。結局、噺家さん方が改名する度にデータベースに登録されている名を書き換えるという原始的手法で対処せざるを得ません。私の場合、データベースは統合化されておらず、異なる部門でデータベースがいくつも併存している状態なので、この書き換えの作業は実に厄介です。しかもこの作業をさぼりがちで後々混乱するということがしばしばあります。
 先月、公開した「ホール落語データリスト」では、名前の欄は現役の場合は最新の名、故人については最終の名で記し、演じた時とその名が違う時は右隣に記すという方法にしました。一方、「日本の話芸」放送リストでは、名前の欄を放送時の名にし、改名したときは備考欄に記すという方法を取っています。ここからして統一できてません。
 「襲名」「改名」は、過去からの物を連綿と紡ぐ古典芸能の「アイデンティティ」とでも言って良いものですが、統一・持続・識別・単純などを重視する現代社会の考え方とは、少々相性が悪いように思うのです。どうでしょう。

集める・並べるということ2012年09月18日 03:37

私の父は13年前に亡くなっています。真面目な人間で賭け事はせず、酒もたしなみ程度、仕事はバリバリこなす人なのに仕事以外の人付き合いはほとんどなく、休日は家や図書館に籠って調べ事や書き事をするのが常でした。そんな父が凝ったのが「コインの収集」で私が子供の頃でした。コイン集めといってもコインショップで売っている古銭や珍しい貨幣を集めるのではなく、10円玉や100円玉などごく普通に使用されている硬貨を集めるのです。集めた硬貨は刻印されている発行年ごとに分けて小ぶりの封筒のなかに入れ、さらにその封筒を菓子の折箱の中にきれいに並べて大切に保管していました。いざという時の財産的価値がある訳でもなく、当時子供心に「そんなもの集めてどうするのだろう」と不思議に思っていました。やはり私が小学校の頃だったか、父が一時的に凝ったのが国鉄の駅名をキレイに書き並べてリストにする事。ワープロやパソコンが家庭に普及する前の時代で、さらにコピーというものが一般化してなかった時代、会社の複写機(コピーすることを「ゼロックスを焼く」と言っていた)で、リストのベースとなる罫線を紙に印刷し、家で暇な時、交通公社の時刻表を見ながら、北海道から九州まで路線別に、駅名、駅名かな、キロ程などを順番に書き写してゆきます。父は真面目な性格を映すが如く几帳面で綺麗な字を書く人で、丁寧に書き並べられたそのリストは良くできたお習字を見る如く美的にも優れた物でした。
 そんな父を見ながら育ったせいか、殊、趣味の面では私も似たのだと思います。集めてそれを綺麗に並べそれをリスト化するのが趣味。趣味の対象も、私はコイン集めこそはしませんでしたが、鉄道、机上旅行、歴史、パソコン、天文など。父は若いころ落語を聴くのが趣味のひとつでした。私が大学生の頃に落語にはまる姿を見て、父は「俺にやたらに似やがって」と自嘲気味に言っていたことを思い出します。晩年は確執があってほとんど父とは話さなくなりました。父は在職中に亡くなりましたが、生存していれば仕事を引退し悠々自適・晴耕雨読の生活で趣味に時間を費やす生活をしていたでしょう。今、生きていたら「落語はろー」のリスト作りに父も協力してくれていたかも知れません。

カセットデッキ壊れる・その後2012年09月19日 20:50

先日、このブログでも記したように14年間使ってきたカセットデッキが壊れました。まだ我が家の押入れの中にはデジタル化していないカセットテープが数十本あります。いつでもデジタル化の作業はできると思ったまま何年間もほったらかしにしたのが迂闊だった。もっと早く作業をしておけばよかったと思っても後の祭り。さてどうする? ひとつ考えられるのが壊れたデッキの修理ですが、電機メーカーというのは交換用部品の保持期間というのを決めており、14年も前の製品だと修理依頼をしても断られる可能性があります。依頼をするのも面倒だし、第一壊れたこのデッキを修理してまで使おうという愛着は有りませんでした。でなければ新しい物を買うかということになります。あまり当てにはしてなかったのですが、クルマで10分ほどの所にある有名家電量販店の大型店舗をのぞいてみます。もちろんカセットデッキなどという代物は無し。中国または東南アジア製と思われる数千円のラジカセやCD付きラジカセは何点か置いてありました。再生するだけならば問題は無いのですが、音質にはある程度こだわりたい。せっかくドルビー付のデッキで録音したものだから、やはりドルビー付のデッキで再生したい、ということでこの量販店もパス。ということでネットで探します。私としてはドルビー付でカセットが再生できるだけの機能があれば良く、ゴテゴテした面倒な機能の無い基本性能だけしっかりしたものであれば良いのです。そのような商品を探すと、アマゾンでティアックからダブルカセットデッキが3万円ほどで売られています。しかしテープからテープへダビングなどすることはもう無いのでダブルカセットなどというものは不要です。もう長く使う予定もなく、数十本のテープを1回再生するだけのために3万円の出費というのも痛い。となればやはりネットオークションで中古の物を探すのが最善の策でしょう。検索するとカセットデッキは山ほど出てきます。しかし「ジャンク品」「動作保証無し」「部品取り用」などと記された物が多く、「完動品」「動作確認済み」というのは全体の1割か2割程度でしょうか。結局、どこだかのリサイクル業者と思われる所から2000円で落札し購入することになりました。そして本日届いたのですが、ドルビー付でそれ以外は余計な機能の付いていないシンプルな機種、動作も問題ないようで、まあまあ良い買い物をしたと思います。なるべく急いでカセット音源のデジタル化を進め、早く「もうカセットデッキは要らない」と言える状態になれるようにしましょう。
 実は、この押入れの中の十数本のテープ以外に、圓生百席の音源について調べて見たいとの思惑があります。レコードとCDで発売されている「圓生百席」でなぜカセットテープなのか。この事に関しては後日、記すことにします。

十一代目桂文治襲名披露@新宿末広亭2012年09月22日 15:04

 先日このブログで落語家さんの襲名のことについて記しました。折しも東京の寄席では桂平治改め十一代目桂文治の襲名披露興行が始まりました。このブログをご覧の方になら申し上げるまでもありませんが、桂派の宗家の名跡で、東京・上方に数多いる「桂」の亭号を持つ噺家さんたちの頂点に立つ名ですね。新・文治は40歳代半ば(ちなみに私とは同い年)で魚でいえば「中トロ」ぐらい。大名跡を継ぐには丁度良い頃合といえましょう。私も「寄席へ行きたい」という虫がうずき始め久々に新宿末広亭に行くことにしました。寄席に行くのは1年ぶりくらい、新宿末広亭へは3年ぶりくらいでしょうか。都心まで電車で1時間ほどの所に住んでいながら1年も寄席に行っていなかったとは、落語ファンとして劣等生です。ということで訪れた新宿末広亭。この寄席の名物はなんといっても「桟敷席」ですが、これはいわゆる「既存不適格」で現在の法令基準には適合しないそうです。さらに避難用出口の確保の点でも問題があるとか。昭和21年に建てられたこの愛すべき寄席建物も、数年のちには建て替えが課題となるでしょうが、この昔ながらの風情を残せるのでしょうか。
 さて、記念の写真を何枚か撮って場内へ。客の入りは私が入った頃は7割程度でしたが、ポツリポツリと客は増え、中入りの頃にはほぼ満席になりました(当然2階は開いていない)。本日は襲名興行初日という事で客席の後方には、マスコミの姿も。白髪の男性はご存じ落語写真家の横井洋司氏。他にはNHKや読売新聞、共同通信を確認しました。果たしてテレビや新聞紙面でこの落語界の大名跡襲名のニュースは報道されるのでしょうか。また客席最後列の「関係者席」と書かれた所には京須偕充氏の姿も。
 中入り後に、襲名披露口上。三遊亭小遊三・春風亭小柳枝・昔昔亭桃太郎・瀧川鯉昇という寄席ファンにはおなじみの顔の他、特別ゲストとして毒蝮三太夫が袴姿で口上の席に並びました。「文治というのは大変由緒ある名で、初代は聖武天皇の頃…」とお馴染みのデタラメで客席を湧かせます。
 8時半になり、いよいよ新・文治の高座です。おや、出囃子が「武蔵名物」なんですね。先代文治師匠のお馴染みの出囃子です。何を演じるか、私は勝手に「妾馬」とふんでいたのですが、始まったのは新・文治が自身でもっとも得意な演目に挙げている「らくだ」。鼻つまみ者の死を長屋中で喜ぶというなんとも遣り切れない噺で圓生師などリアリズムを重視する噺家だと陰惨さが際立ってしまいます。しかし新・文治師はそんな陰惨さとは無縁でコミックマンガのように陽気で快活に噺を進めます。屑屋と兄貴分の人物描写をことさらデフォルメするのは分かりやすさを身上する新・文治師のサービスでしょう。屑屋の酔いが深まり立場が徐々に逆転する佳境の場面になると、客席からも大きな拍手が、40分間まったく飽きさせない一席でした。
 昔から今なお続く芸能もあれば消滅してしまった芸能もあります。そんな中で落語が生き残ってきたのは、どこにでもいるような市井の民を主人公とし、慎ましくもたくましく生きる庶民の姿を生き生きと描いてきたからであり、またそれが愛されてきたからでしょう。そんな落語が「寄席」というホームベースと共に末永く続いて欲しいと願う次第です。

ラジオ寄席は10月7日から2012年09月29日 03:08

落語・演芸ファンおまちかねのTBSラジオ「ラジオ寄席」の放送がいよいよ10月7日(日曜日)20:00から始まります。TBSラジオのページへリンク。7日の放送は、襲名したばかりの十一代目文治の「親子酒」、おぼん・こぼんの漫才に太田家元九郎の津軽三味線。次週14日の放送はプロ野球クライマックスシリーズの2日目なのでまず間違いなく休止となるでしょう。21日はファイナルステージの結果次第では放送があるかもしれません。28日は日本シリーズ2日目で雨天中止(可能性は極めて低い)以外は放送されることはないでしょう。ということで、「ラジオ寄席」を本格的に楽しめるのは11月になってからですね。「なつかしの名人芸」に関してはなるべく早く音源のデータをこの場でお伝えすることにします。興味のある方はご覧ください。